トランプ米大統領が打ち出した中国製品に対する広範な関税と、少額輸入品に対する免税措置の適用除外が、中国発の電子商取引(EC)プラットフォーム、「Temu(テム)」と「SHEIN(シーイン)」のビジネスモデルを根底から揺さぶっている。
両社はコスト増に対応するため相次いで値上げを発表したほか、テムは広告費の大幅削減に踏み切り、シーインのサプライチェーン(供給網)には動揺が広がっている。安価な輸入品に依存してきたビジネスモデルは大きな岐路に立たされている。
高関税・デミニミス停止でコスト増 両社値上げ発表、Temuは広告急減
トランプ政権は、中国から米国へ発送される荷物に対し、145%という高関税を課した。さらに、これまで、テムやシーインが低価格戦略の柱として活用してきた、価格800ドル(約12万円)以下の小口貨物を関税なしで輸入できる「デミニミス・ルール(De minimis rule)」について、2025年5月2日に中国への適用を停止した。この「法の抜け穴」とも指摘されてきた制度の適用除外が、両社のコスト構造に直接的な打撃を与える形となった。
これに先立つ4月中旬、テムとシーインはほぼ同一内容の告知をウェブサイトに掲載。「最近の世界的な貿易ルールと関税の変更により運営コストが上昇した」として、価格を引き上げると発表した。低価格を武器に米国市場で急速にシェアを拡大してきた両社にとって、価格転嫁は大きなリスクを伴う。
特にテムへの影響は顕著だ。米経済ニュース局CNBCの報道によると、テムは「億万長者のように買い物を」というキャッチコピーで、米プロフットボールNFLの「スーパーボウル」にも広告を出すなど、派手なマーケティング攻勢で認知度を高めてきた。だが、関税導入後は米国内でのオンライン広告費を大幅に削減した。イスラエルのウェブアクセス分析企業、シミラーウェブ(Similarweb)の調査では、テムは米アップルの「App Store」における無料アプリダウンロードランキングで過去2年間首位を維持してきたが、最近はダウンロード件数が62%減少し、順位も急落した。かつて検索結果やSNS(交流サイト)を席巻した激安商品の広告は、ほとんど見られなくなった。

本記事は、日本ビジネスプレス社のサイト「JBpress(日本ビジネスプレス)」向けに弊社が執筆した記事「米国の対中貿易強硬策、中国ECのTemuとSHEINを直撃 値上げ・広告削減・サプライチェーン動揺 ビジネスモデル根底から揺らぐ、低価格戦略に岐路」の一部です。全文は、JBpress(日本ビジネスプレス)のサイトにてお読みください。