半導体大手の米エヌビディア(NVIDIA)は2025年4月中旬、米政府による対中半導体輸出規制の強化を受け、中国市場向けに性能を調整したAI(人工知能)半導体「H20」の輸出にもライセンスが必要になったと明らかにした。事実上の輸出制限とみられる。同社は2025年2~4月期決算で最大55億ドル(約7900億円)の費用を計上する見込み。トランプ政権はAI技術の軍事転用への警戒を強めており、ハイテク分野での米中対立が一層鮮明になっている。
米政府「中国のスパコン開発に利用・転用される」
エヌビディアが4月15日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した臨時報告書(FORM8-K)によると、米政府は4月9日付で同社に対し、H20を中国及びその他一部の国へ輸出するにはライセンスが必要になると通知。4月14日には、この措置が無期限に有効になると伝えた。
英ロイター通信によれば、米商務省報道官は、米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)製のAI半導体「MI308」や、その同等品も新たなライセンス要件の対象になると明らかにした。
米政府は今回の措置について、「対象製品が中国のスーパーコンピューター(スパコン)で使用される、または転用されるリスクに対処するため」と説明した。H20は、バイデン前政権下で導入された輸出規制に対応するため、エヌビディアが性能を意図的に落として開発した中国市場向け主力製品である。計算能力は抑えられているものの、メモリーチップなど他の半導体と高速接続できる能力が高い。この点がスパコン開発に利用・転用される可能性があると判断されたもようだ。
エヌビディアによると、最大55億ドルに上る費用は主に、輸出制限によって販売できなくなるH20チップの在庫評価損や、顧客との販売契約キャンセルに伴う仕入契約関連費用、関連引当金などによるものだ。

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